石州誌連載7月号「うるしうるわし和の暮らし」(七)

2018.07.17 Tuesday 20:13
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    茶道会員誌「石州」7月号が送られてきました。
    連載「うるしうるわし和の暮らし」の7回目です。


    今回は「漆器の素地」について書きました。
    長くて恐縮ですが、興味ある方は、ご一読ください。
    一応、全文と添付した元のカラー写真を掲載します。


    ***********(本文全文)************


    第六話「漆の素地は木だけじゃないよ」 — 漆を塗れるいろいろなもの —


    先回は、漆が乾くときの条件である「気温と湿度」についてお話ししました。そして、金属に漆を塗る場合の、「高温乾燥法」という特殊な乾かし方についても少し触れました。


    みなさんの中には、「漆って、金属にも塗れるのなら、ほかのどんなものにも塗ることができるのだろうか?」という疑問を持った方もおられたかもしれませんね。きょうは、漆を塗る「素地」について少しお話ししましょう。


    言うまでもないことですが、漆は塗料の一種です。塗料という液体であるなら、どんなものにも塗ることができそうな気がしますね。しかし基本的に、塗った漆がきちんと乾いて塗膜を作り、滅多なことでは剥げない、ということがとても大事ですよね。


    そうしたことを考えると、漆と相性の良い、つまり漆が丈夫な塗膜を作ることのできる素地にも、いくつかの条件が必要になります。そのひとつは、誰にでも直感的にわかると思いますが、つるつるしている面より、ざらざらしている面の方が、漆と素地の接する表面積が単位面積あたり広いので、漆が剥げにくい。そして、漆が素地の中に浸透していくものは、もっと剥げにくいということになりますね。


    そういう点からすると、木をはじめ、布、紙、革、石などは、素地の中に漆が浸透する穴がたくさん開いていて、その点、漆と最も相性の良いものと言えるでしょう。


    そのうち「木」は、漆器の素地として最もポピュラーなもので、板物、挽き物、曲げ物があります。「板物」は「指物」(さしもの)とも呼ばれ、板を貼り合わせ、お膳、重箱、机、角盆、硯箱などがつくられます。「挽き物」(ひきもの)は、ろくろで挽く丸物で、お椀類をはじめ、皿、鉢、丸盆などがあります。「曲げ物」は、木目の通った板を薄く割り、やわらかくし曲げて作るもので、曲げわっぱのお弁当などが有名ですね。漆器の素地に使われる木としては、ヒノキ、ケヤキ、杉、朴、カツラ、トチ、ブナ、栗、桜などがあります。


    「布」は、麻布を型にかぶせ、何枚も漆で重ね貼りして器胎とする「乾漆」(かんしつ)に使われます。仏像のほか、皿や鉢、盆など一般の器もこの方法で作りますが、形を自由に作ることができる反面、とても手間がかかるので、一品ものの作品向きですね。


    「紙」にも同じように、和紙を漆で貼り重ねて素地を作る方法があり、これを「一閑張り」(いっかんばり)と言います。


    「革」としては、なめしていない革を用いて器胎を作り、漆を塗った「漆皮」(しっぴ)があります。そのほか有名なものとしては、鹿のなめし革に、漆で細かい点や型文様をつけて財布やバッグなどを作る「印伝」がありますね。


    つるつるしていて漆が浸透しない「金属」は、普通に乾かすと剥げてしまいがちですが、先回お話しした「高温乾燥法」で、いったん漆を表面に焼き付けてしまえば、あとは楽に漆を塗り重ねていくことができます。これを「金胎(きんたい)漆器」といい、鞍などの馬具や鎧はこの方法で塗られています。


    「ガラス」は、サンドブラストなどで表面を荒らせば、漆が定着します。


    「陶磁器」は、釉薬をかけないでおけば、漆を塗ることができ、これを「陶胎(とうたい)漆器」と言います。ぼくも、花器やカップ類などいくつかのアイテムを制作しています。


    「竹」は、輪切りにしたものに塗ることもできますが、籠やざるのように編んだものに漆を塗るやり方もあり、これを「籃胎(らんたい)漆器」と言います。東南アジアなど南方でよく作られ、軽くて、木のように狂うこともなく、じょうぶなのが利点です。


    「合成樹脂」いわゆる「プラスチック」は、いろいろな種類があり、古くは「ベークライト」と呼ばれるフェノール樹脂が使われ、安価な漆器の代表でした。現在は、ウレタンやABS樹脂などがよく使われていますね。しかし、ウレタン樹脂の上に塗った漆は、木に比べて剥げやすく、耐久性や安全の上でも不安があります。そのほかにも、ポリエステルやアクリル、発泡スチロール、FRP(繊維強化プラスチック)などにも漆を塗ることができます。ぼくもオブジェなど造形作品には、簡単に成形できる発泡スチロールや発泡アクリルなどを使っています。また、木粉を合成樹脂で固めたものも、スプーンやフォークなどの素地として使われています。


    このように、漆はほとんどの素材に塗ることができますが、油分や塩分を含むものだけは、漆が乾かないため、塗ることができません。また当然のことながら、脆いものや狂いやすいものは、素地として不適格です。木の場合は、風通しのよい日陰で何年も乾燥させたものが良材ですが、人工的に乾燥装置を使って乾かすことも行われています。


    さて次回は、こうした素地に漆を塗っていく、その工程についてお話ししましょう。

     

     

     

     

     

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