最近の読書から 〜帚木叢生〜「日御子」

2017.03.10 Friday 21:12
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    先日読んだ「聖灰の暗号」がすこぶる良かったので、帚木蓬生(ははきぎほうせい)さんのものをもう1冊、手にとった。


    この本は、はるか2〜3世紀の太古の日本に、ぼくらを連れて行ってくれる。精神科医でもある帚木さんの、語りかけるようなやさしい文体と、臨場感たっぷりの描写、随所にあふれるヒューマニズムは、ここでも健在だ。


    「日御子」は、もちろん邪馬台国の卑弥呼のことだが、「邪馬台国」も「卑弥呼」も、魏志倭人伝に、当時の異民族である日本を蔑んで用いた字である。よってここではその字は使わず、「弥摩大国」の「日御子」として登場する。


    といっても、彼女が登場するのは物語の後半で、前半の大部分は、弥摩大国に先立って、漢の都「洛陽」に朝貢に赴いた伊都国(いとこく)の人たちの旅行記である。


    まだ船も小さく、馬車も知らず、鉄を精錬することもできなかった日本の1小国が、命がけで荒海を越え、何ヶ月もかけて洛陽までたどり着く苦難や、先進国である中国の文物に驚嘆する様子が、主人公である使譯(しえき=国の通訳兼書記)の目を通して、いきいきと再現される。


    国と国が入り乱れて争い、多くの人が亡くなっていった当時の日本。その悲劇の中に生まれた日御子は、争いを好まず、賢く国々を統治していき、やがて尊い平和が訪れる。


    人々の暖かい交流と平和。これこそが人類の幸福の源だと思うのに、なぜ人は争うのか。21世紀になった今でも、本質は何も変わっていない。人類は進歩などしていないのではないか・・・そう感じざるを得ない。

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