小さな美のボケット 第12話「木造校舎」

2017.03.06 Monday 17:41
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    「小さな美のポケット」(村上新聞 月1回の連載エッセイ)第12話が、きのう掲載されました。今回のテーマは「木造校舎」。


    写真は、村上小学校の旧校舎南廊下ですが、覚えておられる方も多いことでしょう。この薄暗がりが、ぼくにとってはとても魅力でした・・・。


    「わが心の学び舎」というこの写真集には、ほかにも第一,第二講堂、北舎、南舎、東舎、中央廊下、音楽室、木の階段、正面玄関、トイレ、足洗い場、用務員室、池、砂場、花壇、石炭置き場・・・などなど、ここを母校とした人たちにとっては、懐かしい写真が満載です。(*^_^*)

     

    ************(原稿全文)***************

     

    第十二話「木造校舎」

     

    今ぼくは、あるモノクロの冊子をひとつ手にしています。「わが心の学び舎」と題された、旧村上小学校の写真集です。昭和七年に建設されたというこの木造校舎は、この冊子が発行された昭和五十四年、すべて取り壊され、鉄筋コンクリートに建てかえられたのでした。けれど、未だぼくの頭の記憶装置には、当時の校舎の間取りや空間、そこに置かれていたものまでが、鮮明に焼き付けられています。


    理科準備室にあったちょっと気味の悪いガラス瓶の標本、音楽室にかけられていた音楽家の古い肖像画、だるまストーブ用の薄暗い石炭置き場、がっしりした木の階段、傷だらけの机や椅子・・・。どれひとつとっても、それは、長い年月が塗り込められたものばかりで、どっしりとした威厳を備え、ぼくら子どもの心に、言いしれぬ畏敬の念を興させるものでした。


    もちろん、アルミサッシではない木製の窓は隙間だらけで、冬になると雪が吹き込み、トイレの戸のいくつかは、いつも壊れたままで、お世辞にも快適とは言えない校舎でした。


    けれどそこには、階段の下の薄暗がりや、講堂のステージの裏側、うっそうと植物が茂った池の周りなど、足を踏み入れるのが、ぞくぞくするようなミステリアスな場所がいくつも存在し、そこは子どもの想像力を刺激するのに十分な魅力を備えていたのです。


    不思議なことに、四十才くらいまで、ぼくが毎晩見る夢の舞台は、この小学校の校舎に決まっていました。どんな人が登場する夢であっても、場所は必ずこの校舎なのです。そこはもう、単なる懐かしさを超えた、ぼく自身の意識の奥底に眠る「心の原風景」だったのかもしれません。


    近年建てられた学校は、どこも明るく機能的で、古いもの、暗い部分などは、極力排除されてしまったようです。けれどぼくらが、長い廊下の雑巾掛けや、校舎内でのかくれんぼなどを通して、体力や感性を養うことができたのは、この木造校舎にこめられた「時間と空間の力」によるものなのでした。それはあたかも幼い頃に、おじいちゃんやおばあちゃんから聞いた昔話のように、還暦を超えた今でさえ、ぼくの心の中に、確かな存在感を持って生きているのです。

     

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