船絵馬の視察

2015.08.27 Thursday 20:57
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    ぼくは、絵や彫刻を見たり、漆でものを作ることが好きなだけで、美術品とか文化財に対して何の見識もないというのに、なぜか「文化財保護審議委員」なるお役目を仰せつかっている。

    この審議会は、年に数回集まりがあり、市から打診された歴史的な物件に関して、市の文化財として指定すべきかどうかを検討するためのものだ。だから、ふだんあまり見る機会がない、とても貴重なものを見ることができるという、役得がある。

    去年は、市内高根にある「鳴海金山」の坑道の中を案内していただいたが、今回は「船絵馬」(ふなえま)の視察。

    「船絵馬」とは、昔の廻船問屋などが、船の新造に際して、海上安全祈願や遭難を免れたお礼などに、和船を描いて奉納したもの。主に、海沿いの集落などにある神社やお寺などにいくつも残っているが、今回はその中でも、特に保存状態がいいという瀬波の八坂神社と、早川の早川寺(そうせんじ)の2箇所を視察させていただいた。

    まずは八坂神社。瀬波の集落の中でも、ワゴン車がぎりぎり入れるような狭い路地にある。



    船絵馬が掛けられてある社殿。



    ぼくらを出迎えて下さったのは、宮司瀬山さんの奥様。



    13枚の船絵馬は、先代の方がガラス入りの額に納められたとのこと。



    それぞれの額には、船主の名前や船名、年号なども明示してあるものが多い。大場喜代司会長の説明によると、帆の縫い目の数が、船の大きさを表しているとのこと。(たとえば15の縫い目があれば、15反帆の船)

    年号を見ると、文政から慶応に至る江戸後期のものが多いが、明治になってからのものもある。



    慶応や明治のものは、絵の具の色が鮮やか。これは、安価なドイツ絵の具を用いたからだそうだ。



    また社殿の隣には、北前船のひな形を見ることのできる収納庫がある。



    瀬波は、北前船の寄港地であり、「小六町」という名の遊女町もあって、江戸後期から明治初年の頃はとても栄えたらしい。そんな繁栄のあとが偲ばれる。



    そして、次に訪れたのが、早川の早川寺。早川集落内に車を止め、山の手に少し歩くと、うっそうたる木々に囲まれてこのお寺はあった。ぼくは二十年ほど前、村上市まちづくり協議会で、「景観カルテ」という冊子を作った際に訪れた、懐かしいところ。



    大きな立派なお寺で、正面が本堂、左手の建物が船絵馬を飾るお堂だ。



    ここにある船絵馬の額には、ガラスがはまっていないため、直に絵の具の状態を見ることができた。



    ここにあるものは、やはり文政から元治までの江戸後期につくられた10点。



    浮世絵版画を思わせるが、もちろん肉筆画だ。なかなか精緻に描かれている。



    絵の作者名はないが、大坂(大阪)にいた専門の船絵師の手によるものだそうで、帆や船板、波などのリズミカルな曲線を、筆でどのような方法で描いたものなのか、なかなか興味が尽きない。





    ついでに本堂の方も見せていただいた。堂々とした見事なお寺である。



    御駕籠も吊されている。



    内陣の彫り物の見事さに驚嘆。



    この彫り物、わが町内の祭屋台に欲しい。



    海府地区の集落のお寺はどれもそうだが、じつに風格があり、素晴らしい。
    当時の漁師町がことのほか繁栄していたということか。







    空を見あげて何やら、熱く語っている圓山教育長。



    お寺の周囲もなかなか趣があった。人生に疲れた人は、一度訪れると良い。



    このたび視察した船絵馬を、市の文化財とするかどうかは、すぐに結論は出なかった。たいへん貴重なものであることは確かだが、ほかのお寺や神社にもあり、それらをもう少し歴史的な経緯や当時の生活文化との関連も含めて研究したうえで、あらためて議論するということである。

    それにしても、この土地に長く暮らしていても、知らないもの、知らないところはたくさんあるものだ。そうしたものを訪ね歩く旅もまたいい。汲めども尽きぬ豊富な宝が、地域には眠っているんだなあ・・・とあらためて実感した。


     
    category:できごと | by:URUcomments(4)trackbacks(0)
    Comment
    勉強になりました。絵馬、好きです。
    しかし、大滝さんは色々なことに携わり、素晴らしいです。尊敬します!
    • 川崎久美子
    • 2015/08/30 9:38 AM
    久美子さん、いつもコメントありがとう。「お断りする」ということが苦手で、いろんな役目を引き受けてしまい、あたふたしているだけなのですが、そのおかげで、いろんな経験をさせていただいています。
    「尊敬」なんて、そんな・・・あなたのような有能な方に言われると、冷や汗が出ますよ。あなたとお友達になれたお陰で、ぼくも「織り」の奥深さ、楽しさを知ることができました。感謝しています。
    きょうは、先ほどまで町内の区議員として「防災訓練」に参加し、このあとは、電車で県美連の理事会・懇親会に出席します。作品は、いつ作るのでしょうかね。(笑)
    私の家の裏に爆撃機を入れていた中型掩体壕が有り、車で15分の場所に宇佐神宮が有ります。その他色々貴重な文化財が有ります。古神道は、地元に貢献した人に未来永劫感謝の誠を捧げるものですが、その後出雲新羅教→出雲神に祭神が書き換えられたり、加えられたりしていますので、意外と鄙びて朽ちかけた神社が重要だったりもします。それを守って後の人々に手渡すのも大切な事です。GHQが、天照を」太陽神とせよと言った事も知らない宮司がいますから尚更です。
    • 三毛猫
    • 2015/12/04 1:36 PM
    三毛猫さん、コメントありがとうございます。
    大分県の宇佐八幡ですよね。宇佐も伊勢もお参りしたことはありませんが、ぜひ行ってみたいと思っています。特に宇佐神宮は、伊勢神宮に先立つ古い神様ですので、とても興味があります。








       
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