最近の読書から 〜ミステリー4冊

2018.03.16 Friday 21:29
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    最近の読書から ミステリー4連発です。
    長文なので、興味ない方はスルーして下さい。


    読んだ順に・・・

     


    ●香納諒一「虚国」
    過去には探偵もやっていた、風景カメラマンの辰巳が、ある田舎町の廃墟を撮影中、女性の死体を発見する。この町には空港建設をめぐって反対運動が起きていた。最愛の妻を殺された男とともに、事件を捜査することになった辰巳だが、当事者がみな幼なじみの息苦しいほど狭い人間関係の中にあり、真相の究明には困難を極める。暴力団も絡み、次々と起こる事件。やがて5年前に起きたホテル火災が、今回の殺人事件に大きく関わっていることが明らかになる・・・。

     


    ●川田弥一郎「白い狂気の島」
    現役の医師であり、江戸川乱歩賞作家でもある作者の、狂犬病をめぐる医療ミステリー。もうなくなったと思われた狂犬病が、台風の接近する孤島で、39年ぶりに患者が発生した。いったい誰が、何のために、この島に犬を持ち込んだのか。島の青年医師、窪島は、恋人の協力を得て真相解明に乗り出すが、謎は深まるばかり・・・。医師でなければ書けない、リアリティーある描写に、最後まで引き込まれる。

     


    ●北川歩実「お喋り鳥の呪縛」
    車にはねられ意識不明の妹。その妹とともに書き、コンクールに応募したシナリオ「愛を運ぶオウム」が、あるテレビ局のディレクターの目に止まり、人気スター主演でドラマ化したいとの話が、フリーライター倉橋に持ち込まれる。だが、その話には裏があった。シナリオのモデルとなったオウムは、人間の言葉を理解し会話できる天才。そのオウムをめぐって、ある殺人事件が起こり、倉橋は否応なく、事件に巻き込まれていく・・・。

     


    ●熊谷達也「漂泊の牙」
    東北の山奥の家に住む主婦が、大きな野犬に食い殺されるという凄惨な事件が起こる。これはオオカミの仕業か? オオカミはとうの昔に絶滅したはずだが、今も生きているのだろうか? 妻を殺された動物学者の城島、野心家の女性テレビディレクターの恭子、はみ出し刑事の堀越が、その行方を追う。だが、次々と犠牲者が出、またいくつか不審な点も見つかって、人間による殺人なのでは、という疑いも浮上する。雪山そして獣との壮絶な闘い、野生動物と人間の共存というテーマも折り込んで、物語はクライマックスへ・・・。


    どれも面白かったが、イチオシのお薦めはやはり最後の「漂泊の牙」。新田次郎文学賞を受賞している作品です。同じ作者の、熊とマタギの世界を描いた「邂逅の森」もすごかったが、これもまた、圧倒される迫力ある描写です。あらためて筆力のある人だと思いました。

     

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    最近の読書から 〜7冊

    2018.01.29 Monday 20:29
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      もともと外に出るよりも、家の中でシコシコ何かをやっているのが好きな自分。特にこの雪と寒さ。映画・ドラマの録画鑑賞と読書が、何よりも至福の時間となる。


      昨年末から数えて、7冊の本を読了。(現在は桂望実「嫌な女」を読んでいる) 寝る前1時間だけの読書なので、1日30〜50ページくらいが限界だ。


      でもこの7冊、どれも甲乙つけがたく、それぞれに面白かった。

       


      「Kの日々」は、ベテラン大沢在昌の、手に汗握る長編ミステリー。主人公の探偵の調査対象となった「K」という女が、聖女なのか悪女なのか、なかなか魅力的。

       

       

      「邪魔」は、奥田英朗の大藪春彦賞受賞作。34歳の平凡な主婦恭子の幸福な生活が、夫の勤務先の放火事件を機にゆらぎ始める。日常の中に潜む悪夢にさいなまれていく過程が、なんともやりきれない。

       

       

      「逃亡者」は、折原一の女性を逃亡犯にしたサスペンス小説だ。交換殺人の提案に乗ってしまった智恵子が、あらゆる手を尽くしながら警察や暴力亭主から逃亡する、ハラハラドキドキのストーリー。

       

       

      「玉砕」は、太平洋戦争末期の南洋の島で、極限状態のなか戦わざるをえなくなった男たちを描く小田実の小説。読んでいるぼく自身が、戦争に従軍しているかのような迫真のリアリティー。

       

       

      「午前3時のルースター」は、垣根涼介のサントリーミステリー大賞・読者賞W受賞作。失踪し、亡くなったと思われている父を探すためベトナムへと行く青年に、付き添うことになった旅行代理店勤務の長瀬。舞台となるベトナムのサイゴン(ホーチミン)には、様々な妨害や危険が待ち受けていた。父親をめぐる真相とは?

       

       

      「対岸の彼女」は、夏川結衣と財前直見主演で映画にもなった、角田光代の直木賞受賞作。悩み、傷つき、翻弄されながら、多様化した時代を懸命に生きる女性ふたり。なるほど、女性はこんなふうに考え、感じ、行動するのかと、女心に翻弄されっぱなしの男のぼくは、大いに参考になった。

       

       

      「窮鼠の一矢」(きゅうそのいっし)は、村上で話題になった河合敦の歴史小説。戊辰戦争の戦火から村上の街を守り、責めを一身に負って切腹した村上藩の若き家老、鳥居三十郎の物語だ。主戦派と恭順派の争いの中、最悪の状況に陥った藩を救おうと苦悶するその姿が、痛々しくも清々しい。

       

       

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      最近の読書から 〜伊集院静「海峡」「春雷」「岬へ」

      2017.09.29 Friday 22:43
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        読んだ本の感想を長々と書いても、それを読む人にとっては、退屈だろうなあ・・・特にその本を読んだことのない人にとってはね。


        そう思って、読んだ本のことを投稿するのを、しばらくためらっていたのだけれど、伊集院静さんのこの3部作は、とても良かったので、久しぶりに本の紹介をしてみる気になりました。長文、ごめんなさい。


        太平洋戦争の傷跡がまだ癒えぬ時代、瀬戸内海の港町で生まれ育った少年高木英雄が、いろんな人との出会いによって、成長していく青春物語です。


        下村湖人の「次郎物語」や井上靖の「しろばんば」「あすなろ物語」に似ているという人もいますが、ぼくは五木寛之の「青春の門」に共通する雰囲気を感じました。


        大まかに言えば、「海峡」は小学生時代、「春雷」は中学生時代、そして舞台が東京へと移る「岬へ」は大学生時代ということになるでしょう。


        英雄の生まれた家は、海運業を営む厳格な父を中心に、その父を頼り、慕ういろんな国籍の従業員や女衆が大勢、寝食を共にしていて、港町特有の猥雑で、荒っぽいけれど、人情味豊かな空気が、彼をたくましく成長させていきます。


        広島の原爆による病気や偏見に苦しむ人、朝鮮人やその人たちを庇護する人への差別などを目にしながら、若さゆえのしばしば羽目を外した行動に出る友達との交わり、けんか、熱血漢のユニークな先生との語らい、恋、さまざまな人の死を経験していく英雄。家業を継がせようとする父への反発が、全編を貫いていますが、それでは何をやりたいかと言えば、彼にはまだ自分というものが見えていません。悩み、葛藤しながら、自分の歩むべき道を探し続けます。


        優れた小説というのは、目の前に映画のスクリーンが現れたように、その場面、場面の情景が鮮やかに浮かびあがるものではないでしょうか。


        海で行方不明になった弟を捜索する「岬へ」の場面は、ことに圧倒的な臨場感をもって、こちらの胸に迫ってきます。涙が抑えられなくなるかもしれません。


        青春小説は、中年を過ぎてからこそ、そこはかとない哀感を伴って心に響くものであるようです。まだの方は、ぜひご一読をお薦めします。

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        最近の読書から 〜東野圭吾「容疑者Xの献身」

        2017.05.28 Sunday 22:12
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          「いまさらこの作品?」と言われるかもしれないけれど、東野圭吾「容疑者Xの献身」を初めて読みました。

           

          本格ミステリ大賞、直木賞を受賞し、「本格ミステリ・ベスト10 2006年版」「このミステリーがすごい!2006」「2005年週刊文春ミステリベスト10」において、それぞれ1位を獲得して話題をさらった、ミステリー界では有名な作品。

           

          もちろん名前は知っていたし、福山雅治、堤真一、松雪泰子、北村一輝などの出演で映画化されたものは見ていたけれど、正直、映画ではあまりピンときませんでした。

           

          でも原作を読むと、やはり違いますね。ものすごく面白い。犯人がわかっているのに、こんなに読者を引きつけることができるのは、やはり人気作家 東野圭吾の筆力でしょう。

           

          ストーリーは、それほど複雑ではありません。中学生の娘と二人暮らしの花岡靖子が、しつこくつきまとう別れた暴力亭主を喧嘩したはずみで殺してしまうのですが、以前から靖子に好意を寄せていた、隣人で数学者の石神哲哉が救いの手をさしのべ、死体処理を引き受け、緻密な隠蔽計画を立てて、二人に容疑がかからないように仕向けてくれるのです。

           

          しかし、石神と大学が同期で天才物理学者である湯川学が、その成り行きに疑問を持ち、やはり大学が同期の担当刑事である草薙とともに、事件の真相を追求していきます。

           

          二人の天才の行き詰まるような対決、巧妙に仕組まれたトリック、あっと驚くラストのドンデン返し・・・。

           

          本格ミステリーの醍醐味を存分に味わわせてくれる魅力の一冊です。

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          最近の読書から 〜薬丸岳「闇の底」「虚夢」

          2017.05.05 Friday 20:35
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            サスペンス、ミステリー、スリラー好きな妻と自分。

            朝食をとりながらの45分間、映画やWOWOWのドラマを観る。

            そして、布団に入ってから消灯までの45分間は読書。

            365日、この習慣は変わらない。


            ぼくが先日読了したのは、「天使のナイフ」で江戸川乱歩賞を受賞した薬丸岳の、受賞後1作目、2作目の作品。


            「闇の底」は、幼児の性犯罪事件がテーマ。その手の事件が起こるたび、前歴がある加害者を殺すことによって、卑劣な犯行を抑止しようとする男。それを追うのが、かつて妹を同様の事件で亡くし、人生を狂わされた刑事という独特の設定。


            「虚夢」は、通り魔事件で娘を奪われた夫婦が、心神喪失で不起訴になった犯人を追う物語。


            「天使のナイフ」は少年犯罪がテーマだったが、この2作にも刑法の問題提起がある。被害者と加害者の痛みがひしひしと読者に伝わるとともに、平易で読みやすい文章、あっと驚く結末のドンデン返しは、相変わらず魅力的だ。

             

             

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            最近の読書から 〜黒川博行「国境」

            2017.04.12 Wednesday 20:16
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              「国境」よね。これ、おもしろいわよ〜!


              ぼくが手にした一冊を見て、かみさんが太鼓判を押した。ぼくよりはるかに冊数を読んでいる、読書好きの彼女が言うのだから、間違いなかろう。


              そう思いつつ読み進めると、まさに、これぞ黒川博行の極めつけの傑作だった。ハードボイルドの世界にぐいぐい引き込まれる。
              イケイケ極道の桑原と、建設コンサルタントの二宮という「疫病神」コンビが、詐欺師を追って北朝鮮に潜入する。ハラハラドキドキの展開だ。


              日本にいては考えも及ばないような、北朝鮮の実態がリアリティーたっぷりに描かれる。常にぴりぴりと神経を張りつめていなくてはいけない国・・・。


              しかしそんな中、彼ら二人の、関西弁による軽妙な掛け合いが、漫才よりもおもしろく、心を和ませる。これがとても魅力。


              かなりアクの強い世界が描かれるので、向き不向きはあるだろうけれど、読んでけっして損はしない一冊だと思う。

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              最近の読書から 〜帚木叢生〜「日御子」

              2017.03.10 Friday 21:12
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                先日読んだ「聖灰の暗号」がすこぶる良かったので、帚木蓬生(ははきぎほうせい)さんのものをもう1冊、手にとった。


                この本は、はるか2〜3世紀の太古の日本に、ぼくらを連れて行ってくれる。精神科医でもある帚木さんの、語りかけるようなやさしい文体と、臨場感たっぷりの描写、随所にあふれるヒューマニズムは、ここでも健在だ。


                「日御子」は、もちろん邪馬台国の卑弥呼のことだが、「邪馬台国」も「卑弥呼」も、魏志倭人伝に、当時の異民族である日本を蔑んで用いた字である。よってここではその字は使わず、「弥摩大国」の「日御子」として登場する。


                といっても、彼女が登場するのは物語の後半で、前半の大部分は、弥摩大国に先立って、漢の都「洛陽」に朝貢に赴いた伊都国(いとこく)の人たちの旅行記である。


                まだ船も小さく、馬車も知らず、鉄を精錬することもできなかった日本の1小国が、命がけで荒海を越え、何ヶ月もかけて洛陽までたどり着く苦難や、先進国である中国の文物に驚嘆する様子が、主人公である使譯(しえき=国の通訳兼書記)の目を通して、いきいきと再現される。


                国と国が入り乱れて争い、多くの人が亡くなっていった当時の日本。その悲劇の中に生まれた日御子は、争いを好まず、賢く国々を統治していき、やがて尊い平和が訪れる。


                人々の暖かい交流と平和。これこそが人類の幸福の源だと思うのに、なぜ人は争うのか。21世紀になった今でも、本質は何も変わっていない。人類は進歩などしていないのではないか・・・そう感じざるを得ない。

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                最近の読書から 〜帚木叢生〜「聖灰の暗号」上巻・下巻

                2017.02.19 Sunday 13:42
                0

                   

                  読書の楽しみのひとつは、今まで自分がまったく知らなかった世界を、語り手がまるで目の前にいるみたいに、身近に親しく語ってくれることだろう。


                  この本は、13世紀というはるか昔、舞台はフランスとスペインの国境ピレネーの山麓の村、しかもキリスト教の異端裁判をめぐる歴史ミステリーということで、21世紀の日本に住むぼくらにとっては、一見あまり馴染みのない物語と思われるかもしれない。


                  ところが、である。一読したぼくが、「これはすごい!こんなことがあったのか!?」と、一気にのめり込んでしまったのは、ナチスのユダヤ人虐殺を思わせるような、過酷な火刑の場面の圧倒的なリアリティーと、拷問や火刑の苦難をも静かに受け入れ、ローマ教会のまちがった制度を糾弾し、聖書の本質を語るカタリ派聖職者の強く清々しい生き様である。


                  クリスチャンの方、特にカトリック信者の方は、これを読んでどう思われるだろうか。たぶん異論があるかもしれない。


                  ただぼくらは、十字架や聖水、教会などという「形」に依らずに、シンプルに聖書に書かれていることを実行しようとする人たちがいて、十字軍の名の下に、ローマ教会とその権威を利用したフランス国王によって、徹底的に弾圧された事実を知ることで、宗教や信仰の本質、ひいてはこの世から争いを無くすための寛容の精神についても、あらためて考えることができると思う。「深い楽しみ」を味わえる一冊である。

                   

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                  最近の読書から 〜夏樹静子「てのひらのメモ」、葉室燐「実朝の首」

                  2017.02.03 Friday 20:46
                  0

                     

                    先回に引き続き、夏樹静子さんの裁判モノ「てのひらのメモ」を読む。


                    思いがけなく「裁判員」に選ばれてしまった女性を主人公とし、一連の裁判員裁判の詳細が事細かにわかる。もし裁判員になったら、これを読もう!・・・的な、テキストのような小説だ。


                    と言っても固苦しい内容ではなく、6歳の息子を気管支ぜんそくで亡くし、「保護責任者遺棄罪」に問われた母親が、有罪か無罪かをめぐって繰り広げられる、丁々発止の法廷劇。


                    検察側、弁護側、どちらの主張にも一理あり、そこから浮かびあがるのは、さまざまな不運に見舞われる中、必死に誠実に生きようとする「人間の悲哀」ではなかろうか。


                    そしてもう一冊は、葉室麟さんの時代小説「実朝の首」。


                    鎌倉幕府の三代将軍、源実朝が、甥の公暁(くぎょう)に、鶴岡八幡宮の大銀杏の下で斬り殺される、あの有名な場面から始まり、虎視眈々(こしたんたん)と権力を狙う北条義時や、その力を利用してのし上がろうとする三浦義村、武士から政権を奪い返そうとする後鳥羽上皇、陰の将軍としてその胆力、知力は並ぶもののない尼将軍、北条政子などが入り乱れて、権謀術数の限りを尽くす中、ある志を持った、真っ直ぐでさわやかな若者集団の、棟を梳くような活躍が見事。ハラハラドキドキの面白い一冊だった。

                     

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                    最近の読書から 〜夏樹静子「量刑」

                    2017.01.21 Saturday 20:33
                    0

                       

                      久々に手に取ったレンガ本。
                      クリスマス・イブに借りてきて、ようやく読み終えた。
                      710ページは、やはり読み応えがある。


                      ミステリー作家として活躍し、去年惜しくも亡くなった夏樹静子さんの裁判モノ。犯人捜しの妙味や、奇抜なトリックなどはいっさいないが、いきなり交通事故から始まり、殺人、裁判、誘拐・・・と、臨場感あふれる描写で、先が読めない展開に思わず引き込まれ、飽きることがない。


                      32歳の上村岬が、不倫相手に頼まれて「ある大切なもの」を車で運んでいる最中に、身重の女性とその6歳の娘をはね、更に殺人まで犯してしまうという、衝撃的なプロローグ。


                      やがて裁判となるが、映画などでよく描かれる、検察と弁護士の対決だけではなく、それを裁く裁判官の、ひとりの人間としての様々な心理が細かく描かれ、いろんな人の思惑を絡めながら、裁判は進んでいく。そして、判決が何となく見えてきたかに思えたとき、こともあろうに裁判長の家族にある危機が・・・。


                      これはミステリーというより、社会小説という方が近いように思う。裁判員にでも当たらなければ、おそらく経験することのない刑事裁判。居ながらにして、そんな未知の世界を知ることができるのが、「読書」のこの上ない面白さではないだろうか。

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