雪のショータイム

     下渡山(げどやま)と三面川(みおもてがわ)

2月1日に配信したメールマガジン「あなたへ贈る季節のたより」第48号は、「立春」というタイトルだったが、その日の時点で、ここ村上には全く雪がなく、まさに春の兆しを感じさせるような空であった。

ところが、実際の「立春」を迎えてみると、ご覧の通りの雪景色。きょうなど、特に新潟市などでは、81センチの積雪と報道され、交通が乱れに乱れた。雪国新潟であっても、都市部にこれだけ積もるのは珍しい。幸いここ村上では、積雪の量はそれほどではないが、それでも風景は一変した。

きょうの午前、寒波の気まぐれか、ひととき珍しく青空が広がり、たまたま用があって外出すると、雪景色のあまりの美しさに驚嘆。すぐ家に帰ってカメラを持ち出し、撮影する。

その後ほどなくまた雪空に戻り、午後には風も強くなってきたから、これはほんのひとときの、まさに太陽のスポットを浴びた、「雪のショータイム」だったと言えるだろう。

ぼくの拙い写真では、なかなか生の感動を伝えることは難しいが、雪のない地方の方にも、少しは雪の美しさを感じていただけるだろうか。

    山をめぐって、ゆったり川は流れる

       畑の布団と綿帽子

      木の枝に積もった雪を「雪持ち」というらしい

      雪によって強調される山肌の変化

          白と青のハーモニー

          雪の花が咲いた林?

   下渡(げど)大橋から見ると、山が覆い被さってくるようだ

          背骨のような畑・・・

            欲張り!

          足跡のデッサン

ぼくの本選び

普通ならまず手にとらないであろう本を、図書館から借りて読んでいる。

京極夏彦作「魍魎の匣」(もうりょうのはこ)。

いわゆる推理作家であり、妖怪作家でもある作者の「百鬼夜行」シリーズ第2弾、日本推理作家協会賞受賞作で、2年前に映画化もされ、テレビアニメにもなっている作品だという。だが、そんなことは何ひとつ知らないで借りた。

世に京極夏彦ファンは多いであろうし、妖怪好きな人にとっては、この本はたまらない魅力だろう。

けれど、ぼくは妖怪に興味があるわけでもなく、むしろ「おどろおどろしたもの」はどちらかというと苦手である。おまけにこの本は、1048ページもある。聞くところによると、このシリーズはみな分厚くて、「サイコロ」とか「レンガ本」とか呼ばれているらしい。

にもかかわらず、ぼくはなぜこんな本を読み出したのだろうか・・・魔が差したか、文字通り「妖怪に魅入られた」のかもしれない。



ぼくの本選びは、あまり書評を参考にはしない。6年ほど前から、図書館に通い出したのだが、日本の小説は、作家名のアイウエオ順に並んでいる棚の「あ」から順番に、原則1作家1作品を選んで借りてくる。一番最初に借りたのが、阿井景子「秀吉の野望」、次が阿井涉介「荒南風」・・・という具合で進み、現在は「き」の棚まで来た。

もちろん、その中にはすでに何冊か読んだことのある作家もいるし、名前は知っているが全く読んだことのない作家もいるし、全く名前すら聞いたことのない作家もいる。とにかくいろんな人のものを読んでみたいのだ。

今回の京極夏彦氏の本も、食わず嫌いにならぬよう、ともかく読んでみようと思ったわけである。(三分の一ほど読んだ現在、オカルト的な雰囲気の部分、本格推理の刑事もののような部分、探偵小説風な部分、漱石の「吾輩は猫である」のような、知的ユーモアにあふれた会話の部分などが混在し、ずいぶん凝った造りの面白さを感じる)

読んでみて、あまりに自分の好みに合わない場合は、途中でやめることもあるし、また感性がぴったり合った作家の場合は、1つに限らず、続けていくつかのものを読む場合もある。

それでも、今まで途中でやめたものは、わずかに3,4冊くらい。続けて読んだ作家は、浅田次郎、小川洋子、乙川優三郎、北村薫といった数名である。北方謙三氏の「三国志」は、歴史好きと言うこともあり、全13巻を通して読んだ。

もちろん小説以外にも、読みたい本は山ほどあるので、そのほかに専門書の棚を巡り、ぼくの好きな分野の中から、その時の気分で選ぶ。歴史、天文、気象、数学、物理、美術、デザインなどの本が多い。今まで読んだ中では、何といってもドナルド・キーンさんの「日本文学の歴史全18巻」が、まとまった読書として印象に残っている。

現在、京極氏の本と平行して、伊達宗行さんの「『数』の日本史」を読んでいるが、これもなかなか面白い。この本は、読み終えたら、あらためて感想を書くつもりだ。



とにかく節操がなくて、何もかもつまみ食いしたいという、ぼくの欲張りな性格。時間はいくらあっても足りないが、おかげで毎日を心豊かに過ごせることに感謝したい。

大寒に「梅」

きょうは「大寒」にもかかわらず、全国的に四月並みの気温で、新潟市などでも「梅」が咲いたとのこと。けれどここ村上では、昨日の暖かさから一転、きょうは小雨で、あまり気温が上がらず、寒い一日だった。

それにしても、大寒とは到底思われない雪の少なさである。上中越の山沿いでは、ところによっては3メートルを超すほどの大雪と報道されているので、他県の方からは、村上も大雪と思われているようなのだが、同じ新潟県でありながら、実態はこんなにも違うのだ。

しかしそれでも、春を待つ心に変わりはなく、どこかで梅が咲き出したと聞くと、おもわず心が弾む。少しでも早く「春」を感じたくて、ぼくも、朱溜(しゅだめ)のボウルに「梅」を彫ってみた。





「朱溜」は、朱漆を塗った上に、何も顔料を入れない溜(ため)漆(半透明である)を塗って仕上げたものだから、表面を剥くように彫ると、下から朱色が現れる。紅い梅を表現するには好都合である。

ただ、図を引きしめるために入れた直線を、鉢の外側の曲面に真っ直ぐ彫るのは、根性の曲がったぼくには、なかなかに難しい。何度か失敗をした。

新しいものは、けっしてひと息にはできない。地道に自分のスキルを上げていくしかないのだろう。

それは、春が三寒四温を繰り返しながらゆっくりと訪れるのに、どこか似ているのかもしれないと思う。



(C122 ボウル「溜」 径16.8 高4.7センチ ¥10,500)

最近の読書から〜北村 薫「スキップ」

去年の暮れから、清水卓行「マロニエの花が言った」という大河小説の上巻を読み進めているが、少し大判で600ページもあり、1日1時間足らずの読書時間だけでは、上巻だけでもなかなか読み終わらない。

そこで、北村薫の「時と人」三部作のうち、まだ「スキップ」だけここで紹介していなかったことに気づき、しばらく読書感想を書いていないことでもあるし、もうだいぶ前に読み終えた本だが、まずはこちらを、内容を思い出しながら、あらためて感想を書いてみよう。



この作品はシリーズの第1作であるが、話がつながっているわけではないので、どれから読んでも支障はない。ぼくはたまたまこれが一番あとになった。3作とも、人の意識が時間を飛び越えてしまうという設定だが、話とすれば、この第1作が最もシンプルである。

17歳の高校生「一ノ瀬真理子」は、雨で後半部分が中止となった体育祭の日、家に帰ってうたた寝して目覚めると、なんといきなり25年後にタイムスリップしていた。そこでは自分は、夫や、今の自分の年と同じ娘をもつ42歳のおばさんである。しかも高校の教師。

17歳の意識のまま、突然そんな世界に身を置くことになった真理子は、ともかくも必死で頭を巡らしながら、そこに溶けこもうと奮闘する。そこで起こる世代や時代のギャップによるエピソードが、なんともユーモラスで楽しい。また、彼女を理解し、支えようとする娘や夫の行動も、けなげで温かい。

ぼくらのような、1970年代に青春を過ごした者にとっては、学校を主な舞台に繰り広げられることが、とても懐かしく、彼女の心境にも深く共感できる。

周りの人たちと交わされる、さりげなくもほんのりとした心の通い合い、忘れていた甘酸っぱい想い・・・渇いた土にしっとりと水が浸透するように、自然に心が潤い、温かさで充たされるように感じるのだ。ここでも北村薫氏の文章は、やわらかく、人間味にあふれている。

ぼくらに与えられた限られた時間。その中で、さまざまなできごとに翻弄されながら、必死に生きていく自分たちをも「けなげだなあ」と思える。

ほんとうに人間っていいものだ。
生きるって素晴らしい!

「スキップ」は、素直にそう思わせてくれる本だ。

寒気のお年玉

2010年の年明けは、すさまじいばかりの寒風と氷雪に見舞われた。今までは、比較的穏やかな日が多かった元日。これほど大荒れの中で迎える新年も珍しい。

ちなみにここ村上では、「元旦マラソン」という恒例の行事がある。この悪天候の中、今年も予定通り行われたようだが、さぞ選手やスタッフの方々はたいへんであったろう。その労をねぎらい、心から敬意を表したい。

弱虫のぼくなどは、この暴風雪に恐れをなし、二年参りどころか、元日の初詣もとりやめたが、きょう2日、少し穏やかになった時を見はからい、妻と子ども二人を連れて、市内の「羽黒神社」に参詣することにした。

それでも行く前は、道路はこんな状態。雪は風に飛ばされ、ほとんど積もってはいないが、路面はカチカチに凍りつき、視界も十分ではない。




羽黒神社は、長い石段を登った上に拝殿がある。さすがに2日になると、境内に人が多くはなく、百十数段ある石段も、自分のペースでゆっくり登ることができた。



山の上からは、裸木の枝に囲まれた額縁の中に、さっと雪をかぶった市内の様子が見渡せる。




いつも感じることだが、降り始めの雪はほんとうに美しい。ことに黒々とした瓦屋根と、雪の白さとの対照は、そのリズムやハーモニーが素晴らしく、ぼくには身震いするほどの絶妙の美が感じられた。




年の初めから、こんな美を見つけることができて、今年はとても縁起がいい。まさに寒波がくれた「お年玉」である。


さてこのブログ、思わぬような方から「読んでいます」と声をかけられ、驚くと同時に、とても嬉しくありがたい。

今年はせめて週に1度は更新し、暮らしの中で見つけた小さな美や、面白く読んだ本などをどんどん紹介していこうと思う。とりとめのない記事ばかりで恐縮だが、どうか気長につきあっていただきたい。
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