URU氏の こころのふいるむ

北越後にある小さな城下町の片隅で、漆器の制作を生業としながら、
心のフイルムに捉えられた季節の情景や、日々の暮らしの雑感を綴っていきます。
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最近の読書から〜吉田修一「悪人」



タイトルにだまされてはいけない。これはせつないラブ・ストーリーだ。読んだ後に心がじーんとする、そんな小説だ。

保険外交員をしている若い女、石橋佳乃(よしの)が、友人の女性2人と別れた後に、何者かに首を絞められ殺害される。彼女は友人たちには、これから恋人の増尾圭吾と逢う約束をしている、と言っていたが、ほんとうは増尾は一方的に彼女が想っているだけの男で、その晩彼女が逢う約束をしていたのは、出会い系サイトで知り合った土木作業員の清水祐一だった。

だが彼女の死体が発見された後、なぜか増尾圭吾が行方をくらましており、警察は増尾圭吾を容疑者と見て、その行方を追う。佳乃と圭吾と祐一の間に何があったのか・・・

その謎が解明される方向で物語は展開するのかと思いきや、実はそうではなかった。この3人をめぐる周辺の人たちのさまざまな人間関係や心理が、丹念な筆致で語られていく。

ミステリーの要素は少ないし、なかなか筋が進展しないもどかしさはあるものの、どうしようもない境遇に縛られ、あがきながらも必死に生きている人たちのそれぞれの思いが、ストレートに伝わってくるのだ。

やがて祐一は、出会い系サイトで知り合ったもうひとりの女性馬込光代と、果てしない逃避行に及ぶことになる。狂おしいほどの愛を共有しながらも、じわじわと追い詰められていく二人。そして劇的な結末・・・。

この小説は、毎日出版文化賞と大佛次郎賞をダブル受賞しており、本屋大賞にもノミネートされた。また、妻夫木聡、深津絵里の主演で映画にもなり、深津絵里さんはこの作品で、モントリオール世界映画祭ワールド・コンペティション最優秀女優賞を獲得している。

ぼくは、吉田修一は山本周五郎賞受賞の「パレード」しか読んでいないが、それとはずいぶん趣の違う本作だ。なかなか味わい深い言葉が随所に盛り込まれており、その中でぼくの心を捉えた一文がこれである。思わず震災で大切な人を亡くした多くの方たちが思い起こされた。

「ひとりの人間がこの世からおらんようになるってことは、ピラミッドの頂点の石がなくなるんじゃなくて、底辺の石が一個なくなることなんやなぁって。」

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仕事部屋に咲いた花



ふだんは静かなぼくの仕事部屋。だが16日、異変が起きた。

妙齢のお嬢さま4人の賑やかな声。漆はし塗りの体験に訪れたお客様だ。おひとりは新潟県内だが、あと3人は東京から。

「オイ、おまえの鼻の下が伸びてるぞ!」と言われそうだけど、でもうれしいじゃないか。こんな若い方たちが、この寒空の中、わざわざこんな遠くまでいらして、漆を体験して下さるなんて・・・。それも、「ものづくりって、楽しいね!」と声を弾ませながら、1時間半もほんとうに楽しそうだったのだ。

こういう時間は、とても貴重だよね。仕事はそれぞれ自分の箸に意識を集中させているけれど、でも周りには気の置けない仲間がいる。一緒にものを作ることのできる充実感、そして漆の見るほどに美しい色。・・・それはなにものにも代え難い楽しさだ。

どんよりと曇った空が続く新潟の冬に、こんな華やかなひとときをプレゼントしてくれた巡り合わせに感謝! そしてきょう、塗った漆が乾き、その「花」たちにそれぞれ力作の箸を発送した。

できごと | comments(0) | trackbacks(0)

最近の読書から〜高橋克彦「火怨」



「これ、とってもおもしろいわ。あなたにおすすめよ。」

今まで歴史小説なんて、ほとんど読まなかった妻が、珍しく夢中になって読み、おまけにぼくにまで薦めてくるなんて・・・上下に分かれ、しかもどっしり厚みのある2冊だが、彼女をそれほど魅了させた本ならと、今年の読み始めに手にとった。

時代は奈良から平安に移る頃、東北の蝦夷(えみし)を平定しようとした朝廷軍に抵抗して、現地の民を横暴な侵略から救った英雄「阿弖流為」(あてるい)とその仲間たちの物語である。

数万という圧倒的な数の軍勢で押し寄せる朝廷軍に対し、地の利を生かし、知恵と勇気と仲間どうしの固い信頼の絆で対抗する蝦夷軍。その捨て身の作戦が見事に功を奏し、何度も危機を免れる。手に汗握る場面の数々、そして若者たちのすがすがしい生き様に惹かれながら、どんどんページは進む。

そして後半、初めての征夷大将軍として、歴史の教科書で誰もが知っている坂上田村麻呂が登場。朝廷軍を率いて、ついに阿弖流為たちと対決することになる。その結末はいかに・・・

奇しくも、いま何かと話題になることの多い東北、宮城や岩手の地が舞台となっているのにも興味をそそられたし、理不尽な中央の仕打ちに、地方の人々が自らの生活を守るために立ち上がる姿勢に共感もさせられた。随所に悲壮な雰囲気が漂うが、読後感はさわやかな本である。

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元旦の表情



年末に積雪をもたらした季節風も収まり、元旦、空はおだやかに晴れた。薄いベールのような雲が、上空の風の動きを示している。



片付けた雪山に投影された己の影。陽光は強くはないが、背中にじんわりと温もりが伝わってくる。こんなほのかな温かさが、今年はすべての人たちに降り注いでほしい、と願わずにはいられない。



遠くの鷲ヶ巣山もくっきりと見え、白い河原に家々や樹の黒いシルエットが対照的だ。




お正月の楽しみは、大好きな餡もちにお雑煮。そして多くの知人に思いをはせながら、分厚い年賀状の束を1枚1枚めくっていく時間・・・。





妻や3人の息子とともに、村上市の総鎮守、西奈彌(せなみ)羽黒神社に初詣。今年も、いつもと変わらぬ元日を迎えることができたこと。身にしみてありがたいと感じられた。



長男は岡山、三男は柏崎、きょうそれぞれのところへ帰っていく。あっという間のお正月。明日は日常が戻ってくる。年頭に立てた目標に向かって、今年もいよいよ行動開始だ。

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元日の花 福寿草



きょう配信した「あなたへ贈る季節のたより」第71号のテーマ「福寿草」である。

「元日草」とも呼ばれるが、もちろん自然の状態で咲くのは、3月になってから。これは去年撮影した写真である。この美しく明るい色を見ていると、はや春がめぐってくるのが待ち遠しくなる。

今年も、明るく平穏で、慈愛に満ちた1年になりますように・・・
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